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樹 奏
樹々を用材として使う時・杢目・模様はとても大きな魅力のひとつです。
杢目・模様は樹種により様々で、同じ樹種でも・地域・環境・場所により異なり、それらは川の水面を思わせ・時に激しく・時にゆったりと流れるような模様であったりする、また縮れていたり・うねっていたり・ボコボコしたような、ありとあらゆる姿であらわれます。
例えば、栃の樹は心材部分が赤みを帯び辺材部分が白いことが特徴のひとつですが白い部分だけで採った幅の広い材は「白栃」と呼ばれとても珍重されます。また、他の樹種にも虎柄模様・水玉模様などの・杢目「銘木」と呼ばれ特別扱いされているものなどがあります。
それらは自然界が創りだす樹々達の・杢目・模様で神秘的な唯一無二の世界が広がっています。
私はそれらの・杢目・模様を持つ様々な樹種を使って作品造りをしています。
樹の塊に、それぞれの樹種の・杢目・模様に似合う意匠を考えそれらの個性を最も活かせるよう
木取りをし、削り込み、磨き込み仕上げていきます。
削り込む事により刻々と姿を変える・杢目・模様は時に思いもよらぬ美しさをあらわし、又ある時は頑として突き放され手を加えさせてくれません。
それは自然界が作り出した・杢目・模様との共存、共生する事が重要です、手を加えていく事により樹々に魂が芽生え新たに生き始めると考えている、木工仕事「樹奏」の醍醐味でもあります。
そして、磨き終え仕上げた樹塊をひとつずつ、背景となる額縁に収め、その樹々たちを思わず見入ってしまう・優しさや・強さ・包容力などを奏でる額装した作品を「樹奏」と名付けました。
情報が瞬時に世界中を飛び交う現代社会、意思の受け渡しも速度を要求されます、しかし微妙な心の動きや感情の差などは伝わりにくく思います。また人の移動も加速されさらに速くなる時代がやってきます、身体を心・魂が後追いするような感じがして、それは心と身体の調整を難しくし、人を疲弊させるようでなりません。
自然界の恵みである樹々、その・杢目・模様と身近に接し鑑賞することで、感性を取り戻し心と身体を整え・穏やかに・ゆたかに・癒してくれる存在の「樹奏」であればと思います。